実質収支のミスリードの例

<コラム>ある新聞記事を例に実質収支の怖さを見て頂きます。

****************************記事の内容*********************************
 A県B市は2013〜19年度の中期収支見込みを公表し、15年度決算で実質収支が赤字となり、18年度には「破綻状態」と判断される財政再生団体に転落する見通しであると明らかにした。15年度には市の貯金にあたる財政調整基金が底をつくなど厳しい状況にあり、市は破綻回避のため、公共サービス範囲の見直しや職員の削減などに乗り出す方針。佐久間清治市長は「もはや従来の取り組みだけで状況を克服することは困難。行政の経営そのものを改革、実行していかなければならない」と話している。
 「現在の財政状況は破綻寸前状態と言える。これまでの先送り体質を猛省する。」先月29日に臨時記者会見を開いた市幹部は厳しい表情をみせた。
市によると、今年度の決算見込みは歳入が160億1300万円、歳出が160億300万円で辛うじて黒字となる。だが、財政調整基金残高はわずか1億5000万円。「場当たり的に取り崩してきた」(幹部)ため、15年度末には残高がゼロになり、決算も3億2400万円の赤字となる見通しだ。
さらに19年度までには累積赤字額が約28億円に達し、18年度に実質赤字比率が2割を超え、北海道夕張市のように国の管理下で財政再建する財政再生団体に転落する恐れがあるという。
 市は1999年度に「財政非常事態宣言」を出し、行財政改革に取り組んできた。05年に宣言を解除したが、税収は落ち込む一方で、職員の人件費や福祉関係の歳出が膨らみ続けている。今後、有識者による委員会を設置し、年度内に経営改革プランを策定。滞納額が8億円以上に上る市税の徴収強化▽人件費の削減▽民間委託の推進--などを軸に、破綻回避に取り組みたいとしている。
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 実質収支のページを読んでいただいた人はご理解頂けたと思いますが、確かに『歳入>歳出』だったのでしょうが、歳入には財政調整基金の取り崩しが含まれており、それがあるから黒字であったことは明らかです
 すなわち、一般の家庭に置き換えると収入(給与)が支出(生活費)を下回っているため定期預金を取り崩して収支を合わせているにもかかわらず『家計は黒字であった。』と言っているようなもので、これを『黒字』ととらえる人はまずいないでしょう。
 実質収支の意味を理解していないと怖いですね。